舞台

サンパウロから日系人団体御一行が農場見学と弓場バレエを鑑賞しに来たこの日、私は18年ぶりに舞台に立ちました。
IMG_3614

バレエは3歳から13歳まで習っていました。バレエが好きで好きで、幼い頃の夢は「ディズニーランドのパレードで踊るお姉さん」でした。

弓場農場に到着してすぐにバレエの練習を見学し、久しぶりのバーと大きな全身鏡、レオタード、バレエシューズに胸が高鳴って練習に参加させてもらうようになりました。
IMG_1476

全身鏡に映る自分は醜いもんでした。なんたって、過去マックスのデブやから。

旅中になぜか太っていまして。いや、なぜかではない、理由ははっきり分かっています。旅中はバランスのとれた食事なんて皆無で、米、肉、パスタ、パンばかりの偏った食事をしていたせいでいつの間にか、、、ね、ぶよぶよです。

マコトにX−JapanのTOSHIに似てるねって言われる様。ひどい。

でも、バレエは楽しい。足の運び方や手の動かし方を身体はちゃんと覚えてくれていました。週三回のバレエのレッスンが私の弓場生活のリズムを作ってくれました。

そして2週間前、バレエのレッスン中に先生から「今度サンパウロから来るお客さんにバレエを披露するからマミコも出てみる?」と声をかけてもらい、2曲も出演させてもらうことになったのです。

まさかこの歳でまたバレエの舞台に立てるとは。しかもブラジルで!


この2週間は、足手まといにならないように、舞台でひとり浮いてしまわないように、振り付けを覚えて身体に叩き込むのに必死でした。農作業後の時間をバレエ場で過ごすようになりました。

そして本番当日。

髪を結い上げ、舞台メイクをし、衣装に着替え、舞台袖で待つあの緊張たるや!
11002349_808298679249025_180675297_o

歴史ある弓場バレエ団。
IMG_0239

劇場も手作り、衣装も手作り、照明も装置も全部手作りです。
IMG_0498

「マミコ!失敗しても楽しめばいいんよ!」
緊張して強張った表情の私を見兼ねてお母さんたちが声を掛けてくれました。

いざ!

始まってしまえば、一瞬の夢のような時間でした。

さっきまでキッチンで鍋をゆすっていたおかあさんがバレリーナになります。
IMG_3661

IMG_3674

さっきまで畑で鍬を振り落していたおとうさんが歌っています。
IMG_3574

さっきまでの百姓たちの顔が、表現者の顔に変わります。
IMG_3637

みんなのすさまじいエネルギーに包まれて自分からもエネルギーが出てくる感じ。

雑念は消えて踊らされているような感覚。
IMG_3662

頭ではなく身体の感覚が直接揺さぶられて、日常とは異なる次元に運ばれ、それとともに、自分の心身がスーと静かに整っていくような清麗な感覚。

踊るってこんなんだった!

終わってフィナーレの時になりようやくしっかりと客席を見渡すことができました。笑顔と拍手の劇場。
IMG_3578

ボロボロと涙があふれてきていました。

もちろん泣いているのは私だけなのだけど。

みんな何十年も何百回も立ってきている舞台。お茶の子さいさい。日常の一コマ。

みんな役者だ。表現者だ。

「マミコどうだった?楽しかった?それが一番よ!」

そう言いながらサッと衣装を脱ぎ捨て、メイクはしたままキッチンへ戻って夕食を作り始めるお母さんたち。

なんなんだ、このひとたちは!!



(舞台後の劇場にて)
IMG_3699

風の強い日

それはとてもとても風の強い夜でした。

ヒューヒューと隙間風が入ってくるくらい。

不気味な音だな、と思いながらベットに入ったその夜。

メキッ、メキメキッ、ガラララドッスーン!!!!!

ものすごい振動と音で目が覚めました。

早朝5時。

なんだなんだ!と慌てて外に出ると、いつも洗濯物を干しているベランダがなくなっていました。

家の横の大木の枝が風で折れて落ちてきて、ベランダを破壊したのでした。
IMG_3320

ぎりぎりセーフ!!
IMG_3319

小屋の真上に落ちてたらどうなってたかな・・・ぞっ。

朝食の話題は持ちきりでした。マミコとマコトの小屋が危機一髪だった!と。

おかあさん達が笑って「良かったね!危なかったね!でも壊したんなら自分で直すないとね!!」と。

マコト、人生初の大工仕事です。

大工仕事の得意な村人が木を撤去し、周りの大木をチェンソーで切り倒してくれました。
IMG_3338

マコトは助手として頑張っていました。
IMG_3335

丸二日かかって、ベランダは修復され、私たちの棲家は元通りになりました。

虫も入ってくるし、隙間風もあるけど、どんどんこの小屋に愛着が湧いてきました。

Before
IMG_3318

After
IMG_2109

アンモニアの効能

「まみこちゃん焼けたね!」

non!地黒なんです!!

ねえさん大変です、事件が起こりました。

今日は午後からカシューナッツ拾いでした。
R0016016

のんきにおしゃべりしながら、カシューナッツを拾っている時、
R0016020

R0016017

痛っ!!!

激痛が走りました。気づくと5、6匹の黒いものがブンブンと音を立てて私を攻撃していました。

蜂だ!!!うわーと逃げたけど、腕を三箇所刺されました。

すぐに母屋に戻って、おかあさんたちに言うと

「おしっこよ!いますぐトイレ行きな!ピピっとかければいいんよ!早く!」

って。

はい。ピピっとかけましたよ。

数分後、あれま、痛みが和らぎましたよ。

蜂に刺されたらおしっこ。効きますよ!!

元気です。

ご無沙汰しております。

ただいま、ブラジルの日系人の農場で一ヵ月間お世話になっています。

ふたりともすこぶる元気です。

朝6時前に起きて、畑で仕事し、食べて、10時には寝て、、、という規則正しい生活を送っております。

農作業は想像以上に疲れますが、これまでの旅とは違う充実感を日々感じながら過ごしています。

ぼちぼちここの生活のことを書いていきたいと思います。

また、10月上旬に帰国することが決まりました。

旅の終わりが見えてきました。

残りの時間を有意義に過ごしたいと思います。

みなさんにお会いできるのを楽しみにしています!!

さっ、ブログ書くぞーーーーー!

珈琲より人を作れ

弓場農場の創設者、弓場勇氏は

「畑を耕すことと芸術することは同じ」 と言いました。

自分の畑はキャンバスで、そこに何を作るか、何を植えて育てるかは己次第。誰にこうしろああしろと強制されてやるのではなく、自分で考え、研究して、頭を悩ませて作物を育てる。想像する。キャンバスに絵を描くように。

弓場農場では、誰かがどこかで必ず芸術しています。

畑にいたら風に乗ってピアノの旋律が流れてくるし、夜もあちこちから管楽器の音色が聴こえてきます。
IMG_2287

ビオラ、トランペット、フルート、チェロ、バイオリン、サックス・・・
IMG_0164

月、水、木はバレエの練習があって、火曜は合唱の練習、金曜はアトリエで絵画、土曜は俳句会。
IMG_1481

日曜は周辺の人たちを招待して演奏会が開かれる。
img_7148

強制じゃない。踊るの苦手で楽器もやらないって人もいるけど、そんな人は、木工で家具を作るのが好きだったり、編み物が得意だったりする。

みんなそのままの個性で暮らしている。

ひとりのお母さんが舞台の数日後話しかけてきてくれました

「舞台の上ではすべてが裸になるのね

普段黙々と畑を耕していて

料理を作っていて

それが全て出るんだね

どっちがどっちではなくて

ぜんぶ共鳴しているんよ

魂からぶわっと出る

だからすごいんだよ」

この地の空気を吸い、水を飲み、この地で育てたものを収穫し、食べ、眠り、星空を眺め、集い、語らい、そうして自分の中に生じてきた感覚に基づいて表現している。生きることそのもの。

豊かだなぁと思う。

不思議なことに、旅行者もここで生活して間もなく経つと、「昔ピアノやってた」とか「絵好きや」って言ってまたやり始める人が多いんです。

IMG_0151

しいたけさん

40年前、まだ1ドル280円の時代、自転車で世界一周していた男がいました。

旅の末、弓場農場に辿り着いた男は

ここに惚れ込み、一生をここで暮らすと決め、農場の女性と結婚し、移住しました。

いつもこてこての関西弁で、ウイスキー片手にダジャレを連発してみんなを笑わせてくれる楽しいおじさん。

営農作物としてしいたけ栽培に着手し試行錯誤、悪戦苦闘して10年、ようやく成功。
IMG_3097

その道のりは想像するに難くない。

今やしいたけは弓場農場のヒット商品になっています。
IMG_1444


本当にいろんな人が集って共に生活しています。

「来るもの拒まず去る者追わず」弓場を象徴する言葉があります。

好きでここにいる人ばかり。

出たかったら出ればいいよ。その距離感の心地よいこと。

農作業や手仕事の技術云々の前に、人間としてどう生きるかを学ばせてもらっています。
IMG_3095


Now Playing:きのこオールスターズ「きのこの唄」

黙祷

食事の準備ができると角笛の音が村に響き渡る

「ご飯ですよー」の合図
R0015754
「ボォォォォ」

ご飯の匂いが充満した食堂に村人が集まってくる

みんなが席に着くと「黙祷」の声がかかり食堂が一瞬の静寂に包まれる

キリスト教でも仏教でも無宗教でもなんでもいい。

十字を切ってもいいし、目を閉じるだけでもいい。

私ら夫婦は合掌をする。

5秒くらいかな、静寂をほどく「やめ」の声と同時にまた食堂はざわざわと動き始める。
IMG_0120
ご飯を頂けるありがたさ。

太陽の光そのままの、土の香りの残る野菜たち。
IMG_1457